平成26〜27年度理事長ご挨拶
小川 郁
平成26年10月開催の日本耳科学会総会におきまして理事長を拝命いたしました小川 郁でございます。日本耳科学会理事長就任にあたり一言ご挨拶を申し上げます。
まずは、学会を代表して伊藤壽一前理事長に御礼を申し上げます。この2年間の日本耳科学会は、伊藤前理事長の強力なリーダーシップのもとで活発な事業を展開してきました。特に、平成20年に施行された新公益法人法のもとで任意団体から一般社団法人への移行を進めてきましたが、平成24年1月に一般社団法人に認可されました。また、学会のグローバル化も大きく進みました。米国Otology & Neurotology誌との連携も進み、本年11月には京都市において欧州以外では初めてのInner Ear Biology Meetingを伊藤会長主催のもとで成功裏に開催するなど、国際的に日本耳科学会のプレゼンスを示していただき、日本耳科学会の発展に多大な貢献を賜りました。この場をお借りして伊藤前会長の功績に対して敬意を表し、深く感謝申し上げます。
さて、日本耳科学会は会員数約3000名であり、日本耳鼻咽喉科学会の関連する学会としては最大の学会の一つです。その歴史は古く昭和36年に後藤敏郎会長(長崎大)のもと発足したOto-microsurgery懇話会およびその後のOto-microsurgery研究討論会、Oto-microsurgery研究会などの流れを汲む日本臨床耳科学会と、同じく昭和36年に中村文雄会長(京府医大)のもと発足した内耳生化学懇話会とこの懇談会を引き継いだ内耳生化学研究会などの流れを汲む日本基礎耳科学会が合併して1991年に組織されました。この2つの学会の統合は画期的で、まさに基礎医学と臨床医学の融合という理想的な組織改革でした。それから20余年の歳月を経て日本耳鼻咽喉科学会の最大の関連する学会まで成長してきました。このように、現在の日本耳科学会は基礎医学と臨床医学の両面から耳科学全般を担当する学会であり、学会内には庶務部会、会計部会、定款委員会、保険医療委員会、HP委員会、Otology Japanの編集委員会などの基幹的な委員会をはじめ、国内学術委員会、国際学術委員会、研究会委員会、用語委員会、ガイドライン委員会、Subspeciality委員会、企画委員会などを組織して幅広い活動を展開しています。国内学術委員会では国内にある側頭骨標本データを統合して会員がデータを利用できるシステムを整備している側頭骨ワーキンググループとANCA関連血管炎性中耳炎の診断基準の作成からガイドライン作成に繋げる活動を行っているANCAワーキンググループが中心となって先駆的な活動を行っています。国際学術委員会ではOtology & Neurotology誌との連携をはじめ、国際学会情報の収集、提供の業務などを行っています。研究会委員会は日本耳科学会所属の人工内耳・人工中耳研究会と内耳生理研究会の運営を行うとともに新しい研究会の企画を行っています。用語委員会ではこれまで鼓室形成術の分類、真珠腫性中耳炎の分類などを完成させています。Subspecialty委員会は現在、耳科手術指導医制度の立ち上げにむけて活動しています。ガイドライン委員会が小児耳鼻咽喉科学会と共同で作成した小児急性中耳炎診療ガイドラインは国内外で高い評価を受けていますし、来年には新しい小児滲出性中耳炎診療ガイドラインが発行される予定です。また、耳管開放症の診療ガイドラインの作成も進めています。これらの委員会に加えて、今期から新たに企画委員会を立ち上げました。広くこれからの学会および学術講演会のあり方を検討し、若い耳鼻咽喉科医や医学生に対して耳科学の魅力を伝え、現在、減少傾向にある日本耳科学会会員を増やすための方策について検討していただく予定です。このように日本耳科学会の素晴らしい伝統を継承するとともに、学会のグローバル化をさらに進め、耳科学研究の新しいシーズを育む環境を提供できるような学会を目指したいと思っています。
最後になりますが、今後2年間、日本耳科学会理事長としての職務を皆様とともに遂行することとなりました。日本耳科学会会員各位ならびに日本耳鼻咽喉科学会および関連する学会の関係各位におかれましては、引き続き日本耳科学会の運営に絶大なるご支援、ご協力を賜りますことをお願い申し上げまして、就任のご挨拶といたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。