耳科領域で輝く女性医師紹介~ロールモデルを探そう

新潟大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授 森田由香

耳科学を専攻して以来、手術治療が可能な側頭骨疾患すべてに対応してきました。しかし、近年、手術治療では改善できない難治性中耳炎に遭遇することが増えました。診断、治療に困っていたところ、同じ悩みを持つ先生方との出会いがあり、現在は、さまざまな難治性中耳炎の早期診断、適切な治療、管理方法などについて臨床研究を実施しています。また、大学院で加齢性難聴の遺伝子解析に携わったことから、加齢に伴う難聴や前庭障害と認知機能に関する疫学研究も継続しています。

診療でもキャリア形成でも子育てでもさまざまな困難に出会うと思います。そんな時は抱え込まずに周りの人を頼ってください。できないときはできる範囲で、できるようになったらできる限りのスタンスでぜひ続けてみてください。何か得意分野をみつけることができると、その後も楽しく仕事を続けることができると思います。

1998年
新潟大学卒業
同大学耳鼻咽喉科入局
2007年
同大学大学院医歯学総合研究科修了
2011年
同大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 助教
2015年
同 講師
2021年
同 医学部准教授

岡山大学病院 耳鼻咽喉科片岡祐子

  1. 1)先生にとっての耳科学の魅力とは
    あらゆる年齢層の患者さんが対象で、長期に関わっていけること。その時の症状だけでなく、変化や成長を確認しながら、必要な検査や治療、療育・教育を提案して患者さんや家族の方とともに選択していくことに働き甲斐を感じます。
  2. 2)現在取り組んでいること
    聴覚障害者のバリアフリーに向けたプロジェクトを多面的に展開しています。教育、就労への支援、高齢者の積極的補聴に向けた啓発、災害時にリアルタイムに情報を得られるシステムの開発など、多職種連携、産官学連携で取り組んでいます。
  3. 3)これまで困った事が生じた場合どのように乗り越えてきたのか
    育児と仕事を並行して行うことに手一杯で、近い未来の目標すら持てない時期は何年もありましたが、上司をはじめ周囲の理解があったことで働き続けることができました。学外の先生からも貴重なチャンスやご指導をいただけたことが今に繋がっていて、財産だったと感じています。
  4. 4)目指している将来の姿
    医療と療育・教育、福祉を連携させ、難聴者のコミュニケーションを改善させることに貢献できればと思っています。情報から取り残されることなく、若い世代がもっと可能性を拡げ、高齢者でもQoLを改善させられる、そんな社会基盤を構築していくのが目標です。
  5. 5)後輩にメッセージ
    耳科学は奥が深く、幅が広い分野です。得意なことを見付けて働き甲斐を持って取り組んでほしいですね。
1998年
岡山大学卒業
1998年
岡山大学耳鼻咽喉科入局
2000年
高知県立中央病院(現高知医療センター)勤務
2001年
岡山市立市民病院勤務
2002年〜
岡山大学病院 医員
2003年〜
同院 助手(現助教)
2017年〜
同院 講師

大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師 太田有美

私は学生時代に見学した耳の手術に魅せられて耳鼻科を選びましたが、市中病院にいる間は耳の手術をする機会はほとんどなく、2010年に大学に戻ってから本格的に手術をするようになりました。回り道をしたようですが、様々な環境で様々な経験を積めたことは、今の仕事に生かされていて、人生無駄なことは一つもないと思っています。自分の子供は息子1人ですが、子育てというよりもむしろ、子供からたくさんの幸せな時間を貰いました。今は大学病院でたくさんの難聴の子供たちに関わっていて、子供たちが成長していく様子をみるのは大きな喜びです。私たち医師にとってたくさんの手術の中のひとつであっても、患者さんにとっては大きな決断をした上での手術です。患者さん1人1人の人生に寄り添える医師でありたい、患者さんに最善の医療を提供出来るよう知識をupdateし技術を磨く努力をし続ける医師でありたいと思っています。

1996年
大阪大学医学部医学科卒業
1996年
大阪大学医学部附属病院 研修医
1997年
国立大阪病院(現 国立病院機構大阪医療センター)研修医
1998年
大阪大学耳鼻咽喉科学教室 研究生
2001年
市立堺病院耳鼻咽喉科 医員
2008年
市立伊丹病院耳鼻咽喉科 医長
2009年
兵庫県立西宮病院耳鼻咽喉科 医長
2010年
大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
2022年
大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師

国立病院機構災害医療センター 耳鼻咽喉科医長 大野 慶子

現在取り組んでいること

耳鼻咽喉科疾患全般に幅広く取り組みながら、耳科手術には特に力を注いでおります。同僚の先生方やスタッフと、楽しく仕事をさせてもらっています。

これまで困った事が生じた場合、どのように乗り越えてきたか

しんどい時期は、あります。そのような時期には、目の前のひとつひとつの症例に、より深く集中するように心掛けています。そうして過ごすうちに、些細なことにもやりがいを感じられたり、新しい発見があったりします。最近は息抜きも大切にできるようになりました。好きな音楽や景色に触れる、温かい飲み物を飲む、長めに寝る、などでしょうか。

2007年
東京医科歯科大学卒業
2009年
東京医科歯科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室に入局
東京医科歯科大学附属病院、関連施設耳鼻咽喉科に勤務
2021年〜
現職、国立病院機構災害医療センター耳鼻咽喉科 医長

奈良県立医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科森本 千裕

私は入局後すぐに小児難聴の診療を始め、大学院では騒音が胎児に与える影響を研究してきました。軟骨伝導補聴器の開発に携わることもでき、現在は遺伝性難聴の診断にも取り組んでいます。これらの経験を活かし、奈良県の難聴児診療に貢献するという自分のやるべき使命を果たしていこうと考えています。また大学にいる限りは、環境に感謝し耳科研究や手術にも意欲的に取り組んで参ります。

子育てをしながら研究、診療生活を続けることは簡単ではありませんが、「働く女性医師のための制度」などを上手く利用しつつ、職場の先生やスタッフ、支えてくれる家族との関係を大切にし、そして自分へのご褒美も忘れずに!楽しく仕事を続けたいし、後輩医師にもそうあってほしいと願っています。

2004年
宮崎医科大学卒業
2004〜2006年
奈良県立医科大学附属病院臨床研修
2006〜2008年
奈良県立医科大学附属病院医員(耳鼻咽喉・頭頸部外科)
2008〜2012年
奈良県立医科大学大学院医学研究科
2012〜2017年
奈良県立医科大学附属病院医員(耳鼻咽喉・頭頸部外科)
2017年〜
奈良県立医科大学附属病院診療助教(耳鼻咽喉・頭頸部外科)

東京医科大学 耳鼻咽喉科頭頸部外科講師 白井 杏湖

私は研修医の頃に人工内耳に魅せられ、そこに関わる!と当時大志を抱いて入局しました。聴覚は言語やコミュニケーションに直結し、文化や対人関係に影響する、壮大な感覚だと思います。患者毎に異なる正解に対し、耳科手術、補聴器、人工聴覚器等をシームレスに組み合わせて、QOL向上を図る複数の選択肢を提示できるのは耳科医の醍醐味だと感じています。仕事もプライベートも“自分”では成し得なくても、“チーム”でなら大志でも諦めず膨らませていけると信じています。患者を中心に、医師、家族、言語聴覚士、メーカー等多職種が、各立場から同じ方向を向いてアプローチしていく、耳科学分野のこの感覚がたまらなく好きです。難聴を治すことも、難聴と共により豊かに生きることを長くサポートできるのも我々の大切な仕事だと自負しています。

2008年
東京医科大学卒業
2008-2010年
武蔵野赤十字病院 初期臨床研修
2010年
東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 入局
2013-2014年
米国ミネソタ大学留学
2015年以降
東京医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科