男女共同参画からダイバーシティ推進へ

角南貴司子

本邦で男女共同参画の必要性が謳われ、社会基本法が制定されて20余年が経過しています。かつては出産イコール退職に近いような働き方が余儀なくされていた女性医師も産休・育休や時短勤務といった制度が充実し、定着してきました。しかしながら未だ男女共同が十分に浸透しているとは言い難く、実際2022年に発表された世界経済フォーラム公表ジェンダー・ギャップ指数では日本は146か国中116位であり、先進国の中ではむしろ最低レベル、殊に経済や政治参画に対してより顕著です。その課題としては理系への進学者および研究者、議員、管理職の女性割合の低さが強調されており、即ち男女共同といえども産前産後に代表される特定のライフイベントのみにスポットを当てた支援だけでなく、むしろ幅広い年代層、背景を含む女性たちへの取り組みが要されているのが現状です。

加えて昨今その範囲は拡大し、性別のみならず年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観、更にキャリアや経験、働き方、また個人の能力や特性等の多様性を含んだ「ダイバーシティ」という概念が提唱されています。長く続いた封建的概念を切り崩し、自由度を上げ、潜在している労働力を活用する時代が既に到来しているということです。その導入には業種や組織規模にかかわらずハンドリングする側の裁量も必要とされますが、それでも多様な人材のもつ知識や価値観、能力を最大限発揮させることにより、自由な発想の喚起や生産性の向上、ひいては新たな価値創造、イノベーション創成に繋がるというポテンシャルを秘めているとも解釈できます。

そのような時代の潮流を反映し、前代の「男女共同参画委員会」は2023年4月より名称を変え、「ダイバーシティ推進委員会」として新たに発動することになりました。前代男女共同参画委員会では、学会役員や学術講演会の座長および指定演題におけるに女性の割合増加、産休・育休中の会員に対しての支援、ホームページでのロールモデルの作成に取り組み、それぞれ大きく功績を残しています。今期のダイバーシティ推進委員会の活動では、前代委員会より引継ぐ内容に加え、①耳科手術指導医、Otology Japan誌の筆頭著者学会参加者等の女性の割合データを分析し、数値目標を見直す、②アンケート等で実態調査によりニーズを把握した上で支援対象者や内容を再考する、③他学会や他分野の動向を鑑みたダイバーシティ施策を導入することを目指しています。具体的な内容に関しては追ってHP等を通じて発信していく予定です。

ダイバーシティ推進委員会として、各人が得意分野を活かして長く耳科学医療に携わり、活躍することが可能となるような、学びの機会や出会いの場、役立つ情報を提供していくことを目標としたいと考えています。そして多様性の豊かさを取り入れることで、人材育成のみならず、学術、臨床ともに日本における耳科学医療がより発展していくことを願っています。

ダイバーシティ推進委員会 委員長片岡祐子