対談

対談日:2021年5月26日

角南貴司子 男女共同参画委員会 委員長
小林一女 男女共同参画委員会 担当理事
羽藤直人 男女共同参画委員会 担当理事

角南

日本耳科学会で「男女共同参画委員会」が、この4月から設置されることになりました。理事の先生方や委員の間で、この委員会の方向性について相談してきましたが、今後は女性医師だけに限らないかもしれませんが、女性医師としてキャリアを積んでいくことについていろんな先生方に意見を聞いてみようと、若い先生方のロールモデルとなるようなお話を聞ける企画が必要だなということで始めました。それで対談形式にしたというのは、表面的なことだけでなく、より突っ込んだ話をお伝えできるのではないかということで対談形式を選択しました。
本日は羽藤先生にモデレーターとなっていただき、私と小林一女先生でお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

羽藤

よろしくお願いいたします。私の方からお二人に質問を投げかける形で対談を勧めさせていただきたいと思います。日本耳科学会の中での男女共同参画のプロジェクトということですので耳科領域の診療がどういう魅力があるとか、どういう方に適性があるかということをお伺いしたいのですが、まず小林先生からお願いします。

小林

耳鼻咽喉科はこのたび、耳鼻咽喉科頭頸部外科と名称が変更になるように、広い分野を扱っています。首から上、眼と脳以外の部分をほとんど網羅しているといっていい科だと思います。ただその中で耳科領域というのは頭頸部の悪性腫瘍を扱うようなダイナミックさという点では少し欠けるところもあるかもしれませんが、非常に細かい分野で、それが魅力と思っています。手術においても鼓室形成術というのは世界で一番はじめに顕微鏡を用いた手術だったということを野村教授から聞いていまして、先進的な面もあり、細かやなところが耳科領域の魅力かなと思います。

羽藤
角南先生、いかがでしょうか。
角南
私、耳鼻科になった者としてはレアケースだと思うんですが、もともと眩暈を研究したくて耳鼻科医になりました。眩暈、それから耳に興味をもって難聴に、内科的なところから中耳手術に入ってきたという経歴です。神経耳科としても中枢性のことも含めて末梢性のことに関しても、とても魅力的な分野だと思います。研究に関しても診療に関しても患者さんが訴えておられる症状を末梢の耳から中枢にかけて一つのこととして、外科医の目でも内科医の目でも診ることができ、疾患の理解という意味ではとても面白い、興味深い分野だと思っています。治療に関してもさまざまな治療が行えるというところで、未だにとても面白いと感じて日々、診療しています。
羽藤
素晴らしいですね。お二人は耳科学の領域に興味を持ってこられたわけですけれど、特に女性と耳科診療というのは、私から見ると耳鼻咽喉科・頭頸部外科の領域の中では、女性に親和性があるというか、女性が活躍する場が沢山あるような気がしていますが、そのあたり特に女性ということに関して小林先生、いかがでしょうか。
小林
最近はあまり男女の区別はないかなと感じていますけれども、今は感染症が収まってきていますが、小児の急性中耳炎とか滲出性中耳炎など、子どもを多く扱う分野がありますから、これは女性の得意なところかなと思います。それから顔面神経麻痺、これも手術はもちろんですけど、保存的な治療なども女性には向いているのかなと感じています。
羽藤
角南先生、いかがですか?
角南
眩暈とか難聴とかでも結構、じっくり話を聴くというところがあると思います。小林先生がおっしゃったように最近、男性も女性もあまり差がないのかなと思い始めていますけども、「ふんふん」と話をゆっくり聴くというのは、どちらかといえば女性が得意な方が多いのではないかなと思っています。あと手術の細かいところは頭頸部腫瘍の手術でも出血も少ないし、ゆっくりと細かい作業をすることができるというところは向いている人には向いているんだろうなと思います。
小林
辛抱強いところは女性の方が向いているのかなという気がします。
羽藤
まあ、やっぱり手先の器用さには男女差はないのかもしれないですけど、指先は女性の方が細い気がしますし、細かいところの操作での根気強いところが女性の方が適している気もします。あとわりと耳科手術は座ってできますよね。長時間の手術でも男性に比べて体力のない女性医師でも、対応しやしいのかなと、そんな気もしていますが。
角南
手術の機会でも腹部外科とか整形外科とか機械が大きいですよね。やはり力がないと難しい外科もあると思いますが、それに比べると外科系を選択されるのであれば耳鼻科というのはそんなに力が必要でなくても手術ができる、そういう意味では女性に向いているのではないかと思います。
羽藤
現状としては女性の医師比率が、新しい国家試験の合格者を見ると3割を超えていていますが、日本耳科学会では、それより低い割合となっています。耳科学会の中ではマイノリティのままというのは今まで何が問題だったのですかね。何かご意見ありますか。小林先生。
小林
やっぱり女性のライフサイクルが一番影響していると思います。大学を卒業して研修医になって、古い言い方ですが、医局に入って数年たつ頃、大体30歳くらいになってきてライフサイクルを考えると仕事ももちろん大事だけれども、自分の人生も大切にしたいということはあたりまえだと思います。自分の仕事や研究のピークを迎える前に、ライフイベントを持つ、お子さんを持つことは年齢に限りがあります50歳、60歳になって子どもを産むことはできないので、優先せざるをえないことが一番大きいかなと思います。
羽藤
角南先生、現状の問題はどういうところからきているように思われますか?
角南
おそらく手術をしないで内科的な耳科学を続けておられる先生は結構多いと思います。ただ手術を続けている先生は格段に減ってしまっているということはあると思います。私共の施設でも耳鳴の専門などは、みんな女医さんでやっていたりするので、そういう人たちは結構、長く続けています。今後は手術をいかに続けてもらうかというのは一つのテーマになるんじゃないかなとは思います。
羽藤
ちょっと話はずれますが、キャリア形成を考えると研究というのも耳科領域では重要で、ある程度、避けて通れない部分かなと思いますが、たとえば大学院にいくとしても、年齢的にさまざまなライフプランと重なってしまうところがあるかなと思いますし、耳科学研究と男女共同参画というところでは何かありますか。
小林
耳科学に特化してではないと思いますが、この前、日耳鼻総会のシンポジウムで大学院のことについて発表された先生がいましたが、やはり女性の方が大学院にいく学年が少し遅くなったり、大学院にいく割合が少ないというご報告をされていて、確かにそうだなと私も感じています。専門医は最低限とるのですけれど、そこで満足してしまう女性医師が今までは多いのかなという気がします。かといって女性に研究意欲がないということは絶対ないと思います。そういう能力ももちろんあるのですが、そこにいくまでの過程で、ちょっと引いてしまうという風潮が、どうしてもあるのかなという気がします。角南先生がおっしゃったように耳科領域に限っては、ある程度、手術ができてないと大学病院とか大学とか、研究もそうですけど、病院に残って部長とか医長でやっていけないと思います。私はこれから女性でも部長とか、医長とか大学、病院に残ってやっていくには手術を研鑽してやっていくことが必須かなと感じます。
羽藤
ありがとうございます。角南先生、いかがですか?
角南
まず大学院に関してですが、医局の雰囲気づくりというのは大きいのかなと思うんですね。実はうちではすでに男女比が逆転しています。女性の方が多くなってきて大学院生も、私はまだ2年目ですけども、4人大学院生がいる中の3人が女性です。おそらくそういうことが続いていけば、みんな女性でも大学院にいくのはあたりまえだよね、となっていくとは思います。ただ今、入っている人たちが研究をうまく続けていけるようにコーディネートしていかないと途中で彼女たちが辞めてしまうということがあれば後に続くことが難しくなってくるかもしれないので、今が正念場かなと自分で思っております。
羽藤
特に耳科領域の研究テーマとして女性に親和性があるテーマって、何かございますか?
小林
教室の女医さんが留学して側頭骨の形態、病理について組織標本を見て研究をしてきました。女性には向いている研究手法と思います。
角南
私も顕微鏡を見るのは結構好きでしたね。ただ動物実験になると夜中とか、結構、時間がかかるのでライフイベントと重なってしまうと、基礎研究はなかなか難しいかなと思います。今、研究の範囲も基礎研究だけでなく、統計解析を中心にしたものもあるので、ライフイベントが重なりそうな人にはそういうテーマを考える必要があるかと思います。大学院に入る時点で意欲があれば基礎研究の方にもっていきたいなと思っています。ただ耳鼻科の医局の中で動物を飼って実験するのは結構、今は難しい状況にありますよね。
羽藤
そうですね。研究は男女を問わず、難しい現状にはなっていますね。はい、ありがとうございます。今までの話の流れから、お二人がこれまでどういうステージを踏みながらキャリアアップをされてこられたのか。今、耳科学を専門として日本で教授をされているわけですから、そこに至るこれまでのプロセスとか経緯を研究や心情を含めてお話いただければと思いますが、小林先生、よろしいですか?
小林
私はちょっと古い世代になりました。私が新人の頃は内視鏡手術がまだ行われていない時代です。Caldwell Luc手術の時代で光学機械を使った手術は鼓室形成術、耳の手術とラリンゴだけでした。私は鼻の手術の助手に入ると中が全然見えず、鼻の手術が大の苦手でした。大きい声ではいえないのですけど。
羽藤
倒れている方とかもいましたよね、昔は。
小林
ほんとに局所麻酔でやっていました。診察も額帯鏡で習った世代で、「奥がよく見えない」と思っていました。耳の手術は顕微鏡で行われていて、理解しやすく、これが耳科領域に進んだ理由の1つです。その当時、小児の中耳炎の患者がたくさんいた時代で、小児の中耳炎を診ている女医さんが多くいました。それも心地よかったと思います。それでそのまま耳科領域に進みました。
羽藤
今も関東では耳科領域は女医さんが多いんですか?
小林
飯野先生、奥野先生とか大御所はいらっしゃいますけど。最近は鼻科専門の方が多いかもしれないですね。
羽藤
中堅どころの方が、最近、あまり多くないのかなという気がしていますが。
小林
今、鼻科領域の方が、勢いがある感じがしますよね。
羽藤
そうですね
羽藤
鼻の治療で抗体製剤とかを使われていて、それも勢いに乗っているのかなと思いますし。
羽藤
そうですね。夢のある話をしないといけないので、角南先生、いかがですか。先生自身のここまでに至った道、なぜ耳科だったのか。
角南
もともと眩暈がしたかったので必然的に耳科領域に。もともと耳科学をしようと思ったのは学生時代の修業実習で基礎の教室に入って基礎研究を勉強しようというコースがありました。解剖学で脳の切片を切ってアルツハイマーの研究を手伝わせてもらいました。その時、形態学が楽しかったです。私が入局した時は中井教授の時代で中井教授も耳の基礎の研究をされていたので「研究をしたい」といったら必然的に「耳の研究」に流れて行きました。キャリアを積んでいくという意識は実はあまりなくて、眩暈の研究をしたくて、基礎研究もしたくて好きなことしかしてこなかったんです。好きだからやってきました。今の若い人たちも「面白い」と思えたら、とにかく続ける。続けているうちに、もしかすると、ポジションについていたり、キャリアがついてくる。そんなことをいっちゃったらいけないのかな。
羽藤
いやいや、すごく同意できますよ。
小林
そうですね。好きだから続けてきた。それが一番大事だと思うんです。角南先生は学生の時に自分の好きなことが見つかって、それを続けられる環境におられて、好きなことを忘れずに継続されたことが一番大事だと思います。好きなことが自分の得意なことにつながる、そういうことがあれば道は拓けるし、続けていけると思うのです。耳科学だけではないと思うのですが、女性医師が早いうちに自分の好きなことを見つけて、それを続けていけるかどうかが一番大事かなと思います。それを教えてあげないといけないですね。見つかるような何かをしてあげないといけないのかなと。
羽藤
ほんとは自分で身に付けでほしいですけどね。
小林
そうです、本当は。だけど一から十まで言わないと分からない人も多いのでとも思います。
羽藤
そうですね。褒めながら、用意してあげないといけない。
小林
そうですね。褒めるのは難しいけど。
羽藤
難しいですけどね。教授までたどりつく耳科専門の女性医師も欧米には多い気がするんです。アメリカはそうではない気がしますが。今度、スタンフォードのトップは女性に変わりましたけど、ヨーロッパ方面では結構いらっしゃるような気がして、特に耳鼻科の中でも耳科領域はキャリアアップする上では女性に親和性のある領域なのかなと前々から思ってはいたんですけどね。
特に耳科医ということでなくてもいいと思うんですけど、「ワークライフバランスのとりやすさ」についてご意見をいただければと思います。他科と比較してもいいし、耳鼻科の中で特に耳科ということでもいいと思いますが。
小林
環境が一番大事だと思います。教室の環境。産休とか育休とかとりやすい環境と、それをサポートできる環境を整えることだと。それは昔からいわれていますけど、そこに尽きると思います。環境を整えるには人がいないとできない。産休や育休に入っている時、サポートできる事。人がいないとサポートできないので若い人たちが耳鼻咽喉科医に沢山なってほしい。そうすることでお互い、助け合うことができますから。女性医師が休んだ時に誰かがサホートに入る、奥さんが忙しい時は男性医師が代わって育休をとってもらう。そういう環境を整えるためには耳鼻咽喉科医を増やさないといけないと思います。
羽藤
そうですね。
角南
そうですね。男性が育休をとれることは大きいですよね。
小林
そうですね。
角南
そういう環境にもっていく、そのために「働き方改革」をやらないといけない。ワークライフバランス、夜中まで働かないといけないような仕事のやり方を変えていけないといけないですよね。
小林
うちの局員で本院じゃなくて関連病院にいる男性が3人育休を取りました。
羽藤
ほおぅ。
小林
最初、その病院で育休をとる男性医師がいなかったみたいで、かなり入念な準備をしてとったようですけど、それはそれですごくよかったと思います。一人とると他の先生たちもとりやすくなるので続けてあと二人とりました。
羽藤
わかりました。耳科に限っていえば、緊急での呼び出しも多くはないですし、頭頸部に比べたら長時間の手術も少ないのかなと思ったりもして。
角南
そうですね。
羽藤
そういう意味でも女性にとってワークライフバランスをとりやすい領域になってくるのかなと思うんですね。
角南
夜中に手術に呼ばれるのは耳科手術では稀ですよね。鼻は時々、呼ばれますけど。
羽藤
出血がわりと少ないですものね。それは大きいことかなと思いますけど。
角南
関連病院に出た時に鼻の手術をすると夜中に呼ばれるので耳ばかりになっていきました。耳であれば一人であってもやっていけるという。
羽藤
確かにそうですね。現状で男女共同参画、男性医師の育休の話も出ましたが、徐々には良い方向に向かっているのかなと思うんですが、まだまだ問題も山積していて、特に東京、大阪の都市部にお住まいのお二人に「こういうところが問題だ」という問題提起をいただければと思いますが。
小林
都市部に限るかどうかわからないですが、保育園とか病児保育の環境が整えづらいというか、土地が高いとか場所が狭いとかあると思います。私のところは私学で費用面でも不利だと思うんです。大学には何年もわたって保育園のことを陳情しても一切採り上げてもらえない状態が続いていますし、大学や病院に保育園をつくったとしても、東京の過密な通勤ラッシュの中、お子さんを保育園までつれてこられない事情もあります。電車通勤の方が多いので、そこが大きいと思います。地方ですと車通勤で、ドア・トゥ・ドアで通勤されると思いますが、東京だと近所の方は自転車ですが、電車ですと小さいお子さんをつれてくるのは大変ではないかと思います。シッターさんを雇うといっても高額になってしまう。自分の給料をみんな注ぎ込んでシッターさんに、という話もありますので経済的な面は大変かなと思います。
角南
大阪は東京と地方との間くらいかなと思います。通勤に関しては意外と近くから通っている人が多くて、私が一番遠いくらいで、子どもをつれてくることが無理ではないんですが、保育園をつくるのはかなり難しいです。緊急時に利用できる保育園しかありません。院内に保育園があって病児保育がきちんと整備されていれば、かなり働くやすくはなると思うのですが。
小学校に入ってからの方が厳しいということはないのですか。学童が院内にあってもつれてくることはできないし、家の近くの学童に預けるとなると。小学校のお子さんがいる家庭も結構大変なんじゃないかなと思うんです。
小林
そう思います。子供さんの高学歴を目指されている方は遠くの私立の学校に入れたり、塾通いなど学童期にも大変な事が沢山あるようです。
羽藤
習い事とか。
小林
学校によっては必ず母親が登下校に付き添わないといけない学校もあるようです。保育園、子どもの教育とか実際、いろいろあると思います。
羽藤
地方はその分、恵まれているのかもしれませんね。圧倒的に地元出身者が多いので、おじいちゃん、おばあちゃんのサポートがほとんどの家庭にあるとか、保育園や学童にしても「医者の子どもさん、じゃあ、優先的に」という風潮があるとか。今まで、愛媛の女医さんで、途中で辞めた人は一人もいないですね。週2日、3日とか一時的に時短で雇用したり、いろんな形態を使いながら継続いただいているので、サポート体制は田舎と都会では違うのかなという認識もあったりはするんですけど。だから地方がいいというわけでは決してないんですが、ゆったりとみていただけるところは確かにあるのかもしれません。通勤も全員、車ですから。歩いてくるか、車ですね。
角南
羨ましいですね。
小林
実家が近いことが大きいかなと思いますね。
羽藤
どちらかの両親が近くにいるというパターンが多いですね。
小林
それは大切かなと思います。
角南
ただ両親に頼らなくても子育ても仕事もできる社会がほんとは望まれますよね。
小林
もちろん、そうですね。
羽藤
インフラもそうですけど、時短という制度や男性育休とか、長期化できるような仕組みが必要なんでしょうね。解決の一番の方向性は医師を増やすこと、耳科領域や耳鼻科医の医師を増やすことがサポートにつながるということかなと思いますね。
小林
はい。
羽藤
卒前卒後教育を日本耳鼻咽喉科頭頸部外科科学会でもやらせてもらっていますが、3年目の専攻医が大分増えて280までいっていたんですが、コロナがあって206まで減って「目指せ300!」を合言葉にやっていますが、そこにたどりつければいいかなと思っています。
あと今後の取り組みへの提言ということで耳科学会の会員数減が大きな課題で、特に女性の耳科を志す若手医師が増えていただくことが重要ではないかと思っていますが、そのあたりのアドバイスや方策をいただければと思いますが、小林先生、何か。
小林
飯野ゆき子先生は「与えられると女性は頑張る」とおっしゃっておられます。今回もそうですが、委員会に必ず女性医師を入れていただくなどは今後もお願いしたいと思います。その一方指定演題の演者に選出される女性医師を育てていかないといけないと思います。座長にはしてもらえても、指定演者にはなかなか指名されない。先生方も「女性を入れよう」と考えていただいていますが、「なかなか人材がいない」と言われてしまいます。ポジションを得られる人を育てる、そのためにはどうしたらいいか。女性の中間層を厚くしないといけないかなと思っています。
角南
小林先生がおっしゃるように座長を当ててもらえると、その気になって「もしかしてこの分野で認めてもらっているのでは?」という気持ちになって、やる気になると思います。「まだ力不足かな」と思っていても、男性、女性にかかわらず、若い先生を登用していくことが、いいのかなと。先月、私たちの委員会で決めた座長比率、演者の比率とか、一番効くのではないかなと思います。本人が「これ好きかも」と思えるきっかけになるんじゃないかなと思います。
羽藤
結果が出ているから担当させるのではなくて、これからに期待して、1年前に、その方に「これやってね」とテーマを提供する仕方もあるかもしれないですね。そんな形で耳科学会を主宰される会長に推薦していくとかしていってもいいのかもしれないですね。各アカデミアのトップから候補者リストを出していただいて、英才教育じゃないですけど、ある程度贔屓しながら育てていくことも必要なのかもしれないなとは思っています。
小林
そうですね。私たちが知らない「金の卵」が、どこかに眠っているかもしれないので。
羽藤
そうなんです。いっぱいいらっしゃると思いますね。
小林
いろんな先生方からご紹介いただくのは大切かなと思います。知らない金の卵は多分、いると思います。
羽藤
自分で抜きんでてくるのは、なかなかね。遠慮深い日本の文化。特に女性の中では難しいのかもしれないし。
小林
そうですね。
羽藤
ある程度、引っ張り上げながら、下からも持ち上げながら育てていく必要があるのかなと思いますね。
小林
今年日耳鼻学会で「輝く耳鼻咽喉科女性賞」をつくりました。5人選ばれたのですが、13人も応募があったのです。私が知らないというと失礼ですけど、「輝く耳鼻咽喉科女性賞」候補が多くおられた事に驚きました。もっともっといらっしゃると思います。耳科領域の輝く女性、金の卵を拾い上げて、その人たちを育ててあげられるようになればいいと思いました。
羽藤
一つのモデルとして、地域で丁寧に主治医として診ている女医さんとか、そういう方にもスポットを当てて学会にもきていただく取り組みを進めることも必要かもしれないですね。
小林
そうですね。診療所勤務の女性医師に話をしていただくと学会に診療所の先生方も興味をもっていただけるような気がします。手術ばかりの話だと診療所の先生方には遠くなってしまうので、別の観点から女性の先生たちに話してもらうのもいいかなと思います。
羽藤
そうですね。角南先生、何かありますか?
角南
今後、委員会として取り組めたらいいなと思うのは、産休、育休の人たちを対象に手術のセミナーを学会主導でするとか、「産休、育休中の人を優先的に入れますよ」というようなことがあってもいいのかなと思います、実技の場に。そうすると手を動かすかこととかができるのではないかなと思います。
羽藤
わかりました。ありがとうございます。最後に小林先生からまとめていただけますか?
小林
こうやってお話をして改めて「人を育てること」は大切だと思います。まず耳鼻咽喉科医がたくさん増え、その中で耳科領域の魅力を伝えて、卵を見つけて育てる。私達はそういう役割をしなくてはならないと思いました。女性医師が自分でキャリアアップを目指してグイグイやっていくのは、まだ日本では、そういう文化がないと思うので、見つけて育てていかないといけないのかなと思いました。
羽藤
お二人には非常に重責だとは思いますが、ぜひその役を担っていただければと思います。本当によろしくお願いいたします。
小林
こちらこそ。
角南
金の卵を見つけにいきます。
羽藤
次はお酒でも飲みながらやりたいですね。
小林
そうですね、ほんとに。
羽藤
リモートはちょっと寂しいですね。本日はどうもありがとうございました。