医学生・研修医
耳鼻咽喉科専攻医の方へ

耳科学の研究や臨床の魅力をお届けします

留学便り

Northwestern University, Feinberg School of Medicine
Department of Otolaryngology
- Head and Neck Surgery, Auditory research laboratory (日本語表記 ノースウェスタン大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科 聴覚研究室)

和佐野浩一郎わさのこういちろう

2016年9月よりシカゴにありますノースウェスタン大学へ留学し、『遺伝性難聴の原因変異の効率的な機能解析法の開発』をテーマに研究に携わっております。信州大学の宇佐美教授や東京医療センターの松永先生を筆頭とする諸先生方のご尽力により日本国内において先天性難聴に対する遺伝子検査が普及し、難聴の原因となる可能性の高い変異が次々に発見され報告されております。しかしその変異が「本当に原因なのかどうか」「病態とどのようにかかわっているのか」などを検討するためには変異タンパクの機能解析が必要となりますが、これまでに用いられていた方法は人的・金銭的に多大な資源を必要としているため、遅々として進んでおりませんでした。よって今回の留学では効率的に変異タンパク機能を解析するための新しい方法を開発することを主なテーマとし、帰国時にその方法を持ち帰ることで国内から発見された各変異の機能解析を進め、患者様および耳科医の皆様のお役にたてる仕事としていきたいと考えております。留学先のボスからはたくさんのアドバイスを頂きながら、自由に研究を進めることのできる環境を与えて頂いており、SLC26A4(Pendrin), SLC26A5(Prestin), GJB2(Connexin26), KCNQ4を対象として充実した研究生活を送っております。

大学のあるシカゴはアメリカ中西部に位置し、ニューヨーク・ロサンゼルスに次ぐ三番目の大都市としてアンタッチャブル、バットマン、ホームアローン、逃亡者、バックドラフトなど多くの映画の舞台となっております。映画の影響などもあり、渡米前はアル・カポネ(20世紀前半の人物なのですが)を中心としたギャングなどが絡む治安の悪い都市としてのイメージを抱いておりました。しかし、近年の強化された治安対策の甲斐もあり、実際住んでみるととても暮らしやすく、流暢ではない私の英語を笑顔で待ってくれるフレンドリーな人々に支えられながら、ほぼ不自由なく生活を送ることができております。冬場の経験したことのない寒さ(氷点下20度を下回ります)も当初はなかなかきつく感じましたが、シカゴ名物として楽しむ余裕も出てきました。世界中の都市ガイドを発行するTimeOutが行った「世界都市ランキング(The Timeout City Life Index)」ではシカゴが2017年、2018年と2年連続1位に輝いており、住民も旅行者も満足度の高い都市として評価を受けているようです。生活の中ではニューイヤー・ハロウィン・クリスマスといった日本でもおなじみのイベントに加え、インディペンデンスデイ・サンクスギビング・オクトーバーフェスト・セントパトリックデイ・イースターなど一年を通してたくさんのイベントに参加することができますし、アメリカ4大スポーツ(MLB・NFL・NBA・NHL)の観戦も楽しめます。私は小学校時代からサッカーを続けてきましたので、近くのサッカーチームを見つけて参加するようになり、中南米のテクニック・黒人のパワー&スピード・アメリカ人の喧嘩っぱやさに翻弄されながら、日本人ならではの勤勉性を発揮して存在感をアピールしております。また、アメリカ国内は驚くほど安い値段で航空券やホテルを取ることができるので、連休ごとに様々な都市へ旅行したくさんのことを経験できました。

以上のようにまだ1年半と長くはないアメリカ留学生活ではありますが、研究においても生活においても日本ではきっと得ることのできなかった新しい経験、新しい視野、新しい友人を得ることができ、研究者としてだけではなく臨床医としても今後への大きな糧となる時間を過ごすができていると思います。拙い文章にも関わらず最後まで私の留学記を読んで頂いた方々は、きっと留学への興味をお持ちだと思います。是非留学経験のある先輩方にいろいろ教えてもらいながらチャンスをつかんで頂き、そのバトンをさらに後輩に渡していって頂けるきっかけになれば幸いです。ありがとうございました。

略歴
2003年(平成15年)
慶応義塾大学医学部を卒業し、耳鼻咽喉科へ入局
2004年(平成16年)
関連病院へ出張
2010年(平成22年)
慶應義塾大学耳鼻咽喉科へ助教として帰局
2012年(平成24年)
静岡赤十字病院へ赴任(副部長→部長)
2016年(平成28年)
ノースウェスタン大学へ留学

ボストンへ留学して

愛媛大学 耳鼻咽喉科・頭頚部外科岡田昌浩

私は2017年7月から、米国・ボストンのMassachusetts Eye and Ear Infirmary(MEEI・ハーバード大学)へ留学し、Welling先生の指導の下、研究を行っております。

これまでに、日本から多くの先生方がMEEIに来られていると思いますが、現在(2018年3月)も私を含め、7名の耳鼻科医が日本から来ています。基礎研究や側頭骨病理の研究を行う先生方が多いのですが、私は皆さんと違って臨床データの解析を行っています。MEEIでは、約30年分の全Audiogram、語音明瞭度検査の結果がデータベース化されており、その膨大なデータを活用して、伝音難聴とCochlear synaptopathyとの関連、残存聴力活用型人工内耳の適応症例の聴力自然経過や、人工内耳埋め込み後の聴力変化の解析などを行っております。アメリカでは基礎研究だけではなく、このようなデータベースを活用した研究が多くされています。多くの症例のカルテや手術記録を見る機会があり、日本とアメリカの相違がよくわかったと思います。私は基礎研究にも興味があったのですが、短期留学の予定でしたので、データベースを活用した研究を選択しました。しかし、予想以上に今後の臨床に役立つと感じました。データベース研究だけではなく、前向き臨床研究も数多くされており、少しだけお手伝いさせて頂きました。日本でどのように臨床研究をすすめていくべきか、考え直す良い機会にもなりました。

研究だけでなく、生活面でも非常に充実しております。私は、家族3人でボストンへ来ておりますが、ボストンはアメリカの中では治安が良く、公共交通機関が整備されているので、非常に暮らしやすいです。皆さん、とてもフレンドリーで、子供に優しく、子供が遊ぶ公園なども至るところにあるため、子育ても非常にやりやすく感じています。ロブスター、オイスターなど美味しいシーフードもたくさんありますし、美味しいビールもたくさんあるそうです(私はお酒が全く飲めないのでよくわかりませんが)。家賃、物価が高いのが難点ですが、お金さえあれば、ずっと暮らしていたい、そんな環境です。留学に際して、臨床を離れることに少し不安がありましたが、プラスになっていることが多いと実感しています。

略歴
2003年
愛媛大学 耳鼻咽喉科・頭頚部外科入局
2005年
愛媛県立中央病院 耳鼻咽喉・頭頚部外科
2008年
愛媛大学 耳鼻咽喉科・頭頚部外科
2012年
同大学大学院 修了
2017年
米国ハーバード大学留学